消防ポンプ用として使用されているタービンポンプは、ポンプ自体で吸水する能力がない。従って、放水するためには予め何らかの方法で、ポンプケーシングと吸水管内に水を満たしておく必要がある。このために、吸水槽等により常に水を満たしておく方法と真空ポンプによって吸管およびポンプケーシング内の空気を排出して吸水する方法がある。可搬消防ポンプの場合は、呼び水装置として後者の真空ポンプを使用している。
真空ポンプの性能は、吸水口と同径で長さ5mの吸管を使用し、その外端を閉ざした状態で試験した場合、閉塞した外端における真空度が、試験時の大気圧84%に達するまでに要する時間(真空出現時間)30秒以内と規定されている。(動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令)
ポンプ級別 | エンジン回転数(rpm) | 真空ポンプ回転数(rpm) | 真空出現時間(秒) | 最高真空度(cmHg) |
---|---|---|---|---|
B-2 | 3500 | 3000 | 6.5 | 70 |
B-3 | ||||
C-1 | 3500 | 4400 | 10.0 | 70 |
D-1 | 3700 | 4400 | 7.0 | 70 |
真空ポンプは、主に4翼偏心ロータリー式が使用されている。ロータは本体に対し偏心して取り付けられているため、本体の内壁とロータおよびベーンで形成される4個の空間がロータの回転によってその容積を変化させ、空気を吸込口から吸入し吐出口から排出することにより、ポンプケーシングおよび吸管内に水を吸い上げる構造となっている。
No. | 名称 | No. | 名称 |
---|---|---|---|
1 | 真空ポンプ | 6 | プーリー |
2 | ロータ | 7 | ベアリング |
3 | サイドプレート | 8 | 0リング |
4 | ベーン | 9 | シャフト |
5 | 真空ポンプカバー | 10 | - |
真空ポンプは、ベーンが高速でケース内壁を摺動するため、接触部の耐摩耗性と気密性が性能上重要な役割を果たしている。このため、給油式が一般であるが、自己潤滑性材料を使用した無給油性も開発されている。
給油式は、真空ポンプの上部または下部にオイルポットを持ち、真空ポンプの動作に合わせて自動給油される構造で、ロータ室の負圧によりオイルを吸引し、ケース内壁とベーンを潤滑するとともに、油膜により気密も保つ。
無給油式は、ベーンの材質が自己潤滑性のある材料で、かつ、気密向上のためにサイドプレートを追加した構造により、耐摩耗性と気密性を兼ね備えたもので、給油を不要にしたものである。
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